信用されるデジタル通貨の条件について考えてみる

EXコイン開発者の房広治さんは、『新たなデジタル化のシステムを作るときに重要になるのは、実は正義ではなく、公正さであると主張されています。

世界で普及する決済システムをデザインする上では、「公正さ」が大切です。公正さがなければ、通貨として人々に信用されません。逆に、ドルのような法定通貨よりも「公正」であると人々に認められるデジタル通貨ができれば、将来的にはドルに取って代わる可能性があります。

 

世の中には2,000種類を超える仮想通貨(暗号資産)が存在しますが、現状では公正さを重んじる通貨はほとんどないように思えます。

今回は、信用されるデジタル通貨とはどのようなものなのか、その条件を考えてみようと思います。

なお、本文中『』で括っている部分は、房さんのメルマガからの引用です。

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この記事の目次

「正義」と「公正」の違い

「正義」と「公正」の対比については房さんのメルマガで紹介されていた内容ですが、許可をいただいたので引用しながら進めます。

正義とは

 

1 人の道にかなっていて正しいこと。「正義を貫く」「正義の味方」

2 正しい意義。また、正しい解釈。「四書正義」

3 人間の社会行動の評価基準で、その違反に対し厳格な制裁を伴う規範。

要するに、『正義・Justiceは正しいことをするという信念』だと思います。

公正とは

 

[名・形動]公平で偏っていないこと。また、そのさま。「公正を期す」「公正な取引」「公正な判断」
→公平[用法]

[派生]こうせいさ[名]

一方で、『公正さ・Fairは、公的な正しさであって、公的に規則で正しいと認められるもので、社会正義とは違う』概念なのです。

 

両者の違いを考えてみる

株式の仕組みを例に考えてみます。

ある株式が将来的に値上がりする場合、初期にリスクをとって投資をした人は、それよりも遅れて投資をした人よりも将来的により大きな利益を獲得します。

株式市場は資本主義経済のエンジンの役割を果たしています。リスクをとった投資家の出資先が成功した場合に、小さいリスクしかとらなかった投資家よりも大きな利益を手にするのは、資本主義の下では当たり前のことのように思えます。

とはいえ、人によっては、これは「正義」ではないと考えるかもしれません。しかしながら、株式市場の仕組みには「公正さ」は確保されています。

EXコインは法定通貨に連動するステーブル・コインではなく、法定通貨から独立した変動相場制のデジタル通貨です。そのため株式と同じことがいえます。

 

EXCは株式と同様、早期にリスクをとって投資をした人々の方が、遅れて市場に参入した人々よりも得をする設計になっています。しかしながら、どの段階で法定通貨を売ってEXC買いを行ったとしても、勝つ確率は必ず50%を超えるように設計されています。この点、公正さを重視した設計となっています。

 

「公正さ」の観点から見るEXコインの優位性

EXコインはなによりも「公正さ」を重視して設計されています。

各国の中央銀行の独立性は損なわれている

主要先進国の中央銀行の現状は、人々から見て公正さを感じられるものなのでしょうか。

米国のFRB(連邦準備制度)や日本銀行は、建前としては(法的にも)米国政府や日本政府から完全に独立しています。かつて、中央銀行による国債の直接引受が原因で多くの国が激しいインフレに苦しんだ教訓から、国際的な基本ルールとして「中央銀行の独立性(金融政策の独立性、業務運営の自主性)」が定められました。

しかしながら、実際にはそれぞれの政府の意向を金融政策(財政政策)に反映させてしまっています。米国政府は、FRBに利上げを見送るように牽制しています。日本政府は、自民党政権下で黒田氏を日銀総裁に任命して量的質的金融緩和(異次元緩和)を実施し、最終的には戦時中行われた禁じ手とされる実質的な日銀の国債引受に踏み切っています。

この現状に鑑みると、各国における中央銀行の独立性は損なわれているといっても過言ではありません。本来中央銀行に求められていたはずの「公正さ」は、いつの間にか忘れ去られているように思えます。

IMFによれば、SDKを構成する5種類の通貨(ドル、ユーロ、円、元、ポンド)の発行体は、いずれも累積した債務残高の大きさがきわめて危険な水準にあります。

房さんによれば、『それぞれの政府が公正さを前面に出すのをやめてしまったため、通貨システムが機能しているのかがチェックできない状態なのです。

人の手が一切介入しないシステム

ここからわかることは、「人の意思」が介入すると、長期に渡って「公正さ」を維持することが難しいということではないでしょうか。

最も公正なシステムを構築するためには、できるだけ「人の介入」を排することが必要なのです。

EXコインは、『人間の意思が全く入る余地が無い、需要と供給、即ち市場価格によって、自動的に通貨供給量が決まるシステムにすることにより、サーバがダウンしたときなどだけ、人の介入が必要な設計』になっています。

 

ビットコインは、いわゆる非中央集権の仕組みにより、管理者による不当な介入を受けない点が評価されました。分散された利用者によって共同でデータを管理する仕組みは、利用者に公正さを感じさせる上手いマーケティング手法であると思います。

一方で、ビットコインは脆弱なセキュリティゆえにハッキング被害は多発(これは、ビットコイン自体への攻撃と、ビットコインを扱う取引所への攻撃両方を含みます)し、秘密鍵の喪失等のトラブルが発生したときには資産は永久に戻ってきません。管理者を分散するための仕組みとしてマイニングを採用しているため、市場規模が拡大するにつれて消費電力が際限なく増大するという、実用性のない非合理的な設計になってしまっています。

 

マーケティングを重視するあまり特殊な思想にこだわるビットコインとは異なり、EXコインは、一般的にいわれるところの「中央集権」と「非中央集権」の概念が持つ、それぞれの長所を組み合わせています。様々なトラブルに柔軟に対処するために管理者の役割を残しつつも、「公正さ」を損ねるような不透明な要素は排除しています。

また、管理者でさえも不正を行えない仕組みが組み込まれています。

将来的には、各国の中央銀行等がEXCプラットフォームを共同で管理する形となり、完全な透明性の元での相互監視の仕組みが機能するようになります。

 

最終的に生き残るデジタル通貨とは

日本銀行は、「人の介入」が原因で、過去の戒めを蔑ろにして「禁じ手」の財政ファイナンスを続けています。この状態が継続すれば、国際的な格付け会社による日本国債の評価下落やクレジット・デフォルト・スワップ指数上昇のタイミングで金利が上昇して政府債務が発散し、第二次大戦後と同じようなハイパー・インフレーションを引き起こすかもしれません(「継続すれば」とは書きましたが、この政策は始めるのは容易いものの止めるのは難しく、実際にはもはや出口はないと考えられています)。

米国政府は政権の支持率維持のために減税を打ち出し、政府債務を急激に増大させ続けています。GFS(政府財政統計マニュアル)によれば、トランプ政権下で米国政府の対GDP比総債務残高は106.14%に達しています。これは、金利が8%程度まで上昇すれば米国政府がデフォルトする水準です。

 

先進国の現状を反面教師として考えてみると、最終的に人々に支持され実社会に根付くデジタル通貨は、なによりも「公正さ」を重んじる通貨だとは思いませんか?

 

 

 

引用文献

世界経済のネタ帳『アメリカの政府債務残高の推移

房広治『正義。正しいことをする信念 房広治の「Nothing to lose!」Vol.244

 

参考文献

NEW YORK POST『The world has never been more in debt

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